使命感−お金儲けを超えて

大事業にかかるときの使命感
起業家はお金儲けをすればそれで事足れりなのだろうか?
お金儲けを目的とするなら、リスクの高いビジネスなどせず、もっと手っ取り早い儲け方があるのではないだろうか?
起業家は大事業をするにあたって、どのような使命感を持っているのだろうか?

▼ 実例

渋沢栄一
渋沢は著書「青淵百話」の中でこう記している。
「私はこの世に生まれた人はいずれも天の使命を帯びていると信じているから、自分もまた社会のこと、公共のことにはできるだけの貢献をし、その使命を果たしたいと考えている。」
渋沢は実業家として、三井や三菱のような財閥になるのに十分な力がありながら、これを善しとせず、公共のことを常に心がけていたのは、この信念があったからだという。

浅野総一郎
浅野は、渋沢栄一にとりたてられた起業家の一人だ。
日本最初のセメント工場である深川セメントは、官営という役人体質とセメント自体の需要の少なさ(当時は建築資材もレンガが主流であった)から、うまくいっていなかった。
しかし浅野は工場に何度も出入りし、その有用性、将来性を確信し、渋沢に払い下げを依頼する。
浅野は、単に儲けというだけでなく、セメントが近代国家造営には不可欠という使命感をもって訴える浅野の熱意に折れ、間もなく深川セメントは浅野に払い下げられることとなる。

安田善次郎
浅野を資金面からバックアップしたのが、安田である。
安田は、第三国立銀行、安田銀行などの資金を浅野のセメント事業などに注ぎ込んだ。
また80を過ぎた安田が計画していた二大事業に「東京湾築港」と「東京電気鉄道」があった。
これは、国を富ますには、自らがやる金融業だけでなく、輸送力の向上が不可欠と考えていたからだという。
東京湾構築して大船巨船にたえられるものとすること、そして東京大阪間に弾丸列車を走らせることを考えていたのだ。
安田は、「有力な富豪は他人にできない場合にその力を貸すべき、常人にもできることは常人に任すべきだ」と言っていたという。

堤康次郎
堤は、戦後間もない混乱の頃、株主の反対をよそに西武鉄道の車両を大量発注した。
戦争で日本は徹底的に破壊され、その行く末さえどうなるかもわからないこの時期に、なんと車両40両、機関車3両の注文を出したのだ。
周囲の心配をよそに堤はこういった。
「(買った車両が)安くなったら、会社が損をすればよい。一刻も早く交通地獄を解消するのが我々の任務だ。(日本が)縮むか伸びるかはわからないがそんなことはどうでもよい。ともかく再起不能だ、こんな国は仕方がないと周囲の国に見捨てられては困る。
結果的に日本は伸び、西武沿線の乗降客は著しく増加した上に、折からのインフレで車両の価値も何十倍にも跳ね上がった。

稲盛和夫
稲盛も著書「ガキの自叙伝」の中でこう記している。
「世間では、富を蓄え、地位や名誉を得ることが生き甲斐と言う人もいるが、私は『世のため人のために尽くすことが、人間として最高の行為である。』と言い続けてきた。」と言っている。

南部靖之
南部も大きな志と使命感に突き動かされて事に挑めば、おのずと「成功」という帰結に行き着く、成功の裏には必ず志と使命感がなくてはならない、と述べている。
パソナの企業理念は「社会の問題点を解決する。」である。

松下幸之助
松下も著書「実践経営哲学」の中でこう記している(一部要約して引用)。
「お互い人間は限りない生成発展を願い求めている。そのような人々の生活文化の維持向上という願いにこたえ、それを満たしていくところに事業経営の根本の役割というか使命があると考えられる。」

柳井正
柳井も著書「一勝九敗」の中でこう記している。
人と同じことや、社会に影響力のないことをしてもしょうがない。本当によい企業というのはある意味で社会運動に近いものでないかと思う。行き過ぎはよくないが、常に積極的に、外向きで顧客の要望に応えるという原点を忘れなければ、必然的に社会に対する企業としての使命感が醸成されてくると思う。」

藤田田
藤田田も真顔で「ハンバーガーで日本人を金髪にする」と言っている。
国際競争力を高めるためには、日本人の体格向上、そして国際化が必要であり、マクドナルドはその使命を負っていると考えている。

豊田喜一郎
豊田は天才発明家である父豊田佐吉から、
「わしは、織機を発明し、お国の保護(特許制度)を受けて金を儲けたが、お国のために尽くした。その恩返しに喜一郎は自動車を作れ。自動車を作ってお国のために尽くせ。」と託されたという。
実際に喜一郎は日本の工業技術の進歩のために自動車事業に生涯をささげた。

▼ まとめ

国家的事業を手がける起業家は、国家の発展や人類全体の向上といった強い使命感を持っている。
これだけの強い使命感があるからこそ、どんな苦闘にも耐え、また周囲の人々をひきつけるだけの魅力を持ち、そして事業を成し遂げてしまうことができるのであろう。

 

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