起業家と資金繰り−起業家が資金繰りに窮するとき

偉大な会社でも貸し渋られた時はある。そこでの浮沈をわけるものとは?
今日のどんな偉大な会社でも一度ならず資金繰りに窮している。
歴史を紐解くと意外な会社が破産寸前まで追い詰められた経験をもっている。
絶体絶命の危機、 そのときに必要なもの、心構えは何であろうか?

▼ 実例

本田宗一郎 ・・・「借りられたのは2人の信用」
昭和29年にホンダは販売不振により手形処理ができず倒産の危機を迎える。
しかし本田宗一郎と藤沢武夫(元副社長、本田の片腕)は、泣き言を言わず洗いざらい、将来の展望をキチンと銀行に話した。
すると銀行の方も「本田さんと藤沢さんならやってくれるのではないか」ということになり、結局資金を貸してもらえた。

堤康次郎 ・・・「常在戦場」
日本有数の不動産を保有する西武グループの創始者堤康次郎も昭和のはじめは破産状態にあった。
リゾート開発を目的とした箱根、軽井沢の積極的な買収を試みるが、折からの不況で、土地の販売が低迷してしまい社債が償還不能となる。
このような状態にあっても、精力的な日常はほとんど変わることなく、「常在戦場」の仕事振りは激しくなるばかりであったという。
また、債権者集会では堤自身が債権者に気を配り、一人一人を席まで丁寧に案内し、開会後それが堤であることを債権者が知り、感激の余り会社提案を支持したというエピソードもある。

松本清 ・・・「事業拡大の資金」
千葉県の薬局からスタートした松本清は、店の従業員にお金を使い込まれ、倒産寸前まで追い込まれる。
そのうわさは「マツモトキヨシは危ない」という噂として広まる。
ここで、松本が打った手は、「千葉で1番高いビルを建てる」
こうすれば「マツモトキヨシは儲かっているじゃないか」ということになる。
そして「事業拡大の資金」として有力者から借入を行い、本当にビルを建て、一層繁盛し、いつのまにか危機の噂もなくなってしまった。

根津嘉一郎 ・・・「小さな倹約の積み重ね」
根津が東武鉄道の社長を引き受けたとき、借金でどうにもならない状態であった。
そこでまず手がけたのは「冗費の節約」であった。 
本社と2つの出張所 を統合し、自分の経営する会社に事務所を移転し、家賃を浮かせた(9割減!)。
そして 一枚の紙も無駄には使わせず、線路に釘が落ちていれば、保線区に届け自分も一枚の封筒、便箋も私用で使わなかった。
こうして浮いた費用で少しずつ借金を返していった。
やがて、銀行も「根津が社長になってから金を返しはじめた。あの男を信用して貸しなおしてもよいのでは。」ということになり、低利での借り換えが実現し、やがては東武鉄道の再建に成功した。

安田善次郎 ・・・「取り付け騒ぎ」
安田の両替商、銀行家としての信用は日に高まっていったが、明治18年安田が経営していた第三国銀行が「銀の相場で大損した。」という風評が広まり、取り付け騒ぎが起こったことがある。
この時、安田は得意客200名ほどを接待し、取引の実際、経営の実態を明白に話し、得意客を大いに満足させ、いつしかそういう風評も消えてしまったという。
安田はまた手堅いというイメージがあるが、店を開くときはいっぱいまで借金をしながらのスタートで、後に使用人に対し「返せぬ借金をするのは愚人であるが、力に堪える借金をなす程のものでなくては、大事は成せぬ」と言ったという。

安藤百福 ・・・「借金は経営態度を甘くする」
安藤は、日清食品創業以来、無借金経営を貫き通している。
新しい仕事についてはかたくななまでに借金に頼らないと心に誓っていた。
これは借金は経営態度を甘くし、悪循環を生むと考えていたからである。

盛田昭夫 ・・・「借金は親類縁者から」
盛田昭夫はソニーの当初の出資、追加の出資も含め、親族にお願いしている。
それだけ親類縁者に恵まれていたわけだが、親族すら貸してくれないのに、他人が貸すわけがないということも言える。

松下幸之助 ・・・「ダム経営」
松下幸之助は、著書「経営心得帖」の中で「借金をすることを考える前に、例えば集金を早くするとか、適正な値段でお客様に売るとか、そういう普通のことをきちんとすることが、経営を強くする上で、大事である」と言っている。

▼ まとめ

結局資金繰りに窮したときも、決め手になるのは「この人間ならやるのではないか」というその人の信用ということになる。
それは将来への熱意であったり、日頃の誠実な行動であったりする。それだけに日常からどれだけ信用を築けているかがいざという時のカギになると言えると思う。
本田宗一郎は「人間は信用とカネの天秤棒を担ぐ」と言っている。

 

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